しましまな日々

12ステップを通じた問題からの回復について

アルコホリズムかAC、どちらの回復を優先すべき?

今回は「どこから手をつければいいか」という重大な問題について解説します。

※この記事で扱う対象はAAで言う「アルコホーリク(アル中、アルコール中毒者)」、NAで言う「アディクト」といわれる状態(強迫観念と渇望現象の病気)に対するものであって、ISD-10やDSM-5で言う「依存症」や「乱用」「使用障害」などの現在の医学的概念を対象にしていません。また他の精神疾患を対象にしているものでもありません。この部分については「心の家路」さまの記事をぜひ参照していただきたく思います。

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アルコホリズム、物質アディクションは最優先の問題

見出しから結論を書いてしまいましたが、アルコホリズムや物質アディクションといった肉体的生命や社会的生命に直接関わる嗜癖がある場合、そこからの回復が最優先になります。決して、ACの問題を先にすることや、同時に取り組むべきではないとしまは強く思います。

その理由は、そんなことをしていたら回復する前に死んでしまうからです。理由は火を見るより明らかではないでしょうか?だれも、動脈から大出血をしている最中に虫歯の治療をしないのと同じです。最も身体的・精神的・社会的に破壊的・破滅的な嗜癖から手をつけるのは当然のことではないでしょうか。

個人的な話ですが、僕のアルコホリズムのタイプは飲酒最初期からブラックアウトを伴うものでした。飲酒ど薬物使用を始めた約10年前から、それらの物質の使用は僕の肉体や社会的健康を奪い続けているのは明らかでしたが、一旦始めたが最後、自分の意思では止めることができませんでした。そして小休止と再発を繰り返し、その繰り返しをするたびに状態は以前より悪くなるのでした。そのような状態で仕事もできるはずもなく、仕事は失いました。このようなアルコールに対する渇望現象と強迫観念の完全なる奴隷状態では、他のことができるはずもなかったのです。アルコホリズムにまず取り組まなければ、なにも始まらなかったのです。

 

アルコホリズムとACの問題、同時に取り組むのはどうなのか?

12ステップを使った回復には、その人の生活・精神の全エネルギーを要求されると僕は確信しています。 Think!Think!Think! という標語がアメリカのAAにあると聞いたことがありますが、その標語に含まれる質問を自分にしてみるべきです。「あなたはそれを、酒を飲みながらやることができますか?」。

アルコホーリクやアディクトにとって、酒や薬物を渇望現象に引きずられながら使用している状態で建設的なことはできるものではないと僕は思います。まずなんとか連続使用が止まった小休止のときが来たら、その時点でのソーバーからできうる限りの全力をつくして12ステップに取り組むべきです。AAの12ステップとACの12ステップを同時並行して合計24ステップをするといった執行猶予はないと私は考えています。回復の車輪が力強く回り始め安定するまで、回復へのエネルギーはできうる限り集中させるべきだと思います。

もちろん、12ステップは1年も2年もかけてやるプログラムとして設計されていませんので、短期間で行うことは生命を分けるポイントなのは当然だと思います。1年以上かけて12ステップをやったら、僕は飲んでしまったのではないかと思います。飲めば必ず死に直結することは、アルコホリズムの寒々しい現実です。

僕の体験では、まだスポンサーシップもなかった段階である20年1月にAAだけではなくACの12ステップグループに行こうかと迷いましたが、とある仲間の「同時には無理だと思う」というアドバイスをもとに考え、AAのみに集中した出来事がありました。今思えば、仲間のアドバイスはまだアルコホリズムからの回復を得ていない当時の僕にとって最善のアドバイスだったと強く思うのです。

 

アルコホリズムから回復したが、ACの問題に取り組む必要はあるのか?

僕は2020年2月からスポンサーとステップワークを始め、同年4月13日にステップ5を実行するなかで霊的目覚めを得て、すぐに12ステップの全てを実行し始め、アルコホリズムからの回復を確信しました。その後で、7月に自分はACであることを神と自分に認め、ACからの回復のステップを歩み始めました。

これは、まずアルコホリズムからの自分の回復を確信した後で、ステップ12の「私たちの全てのことにこの原理を実行しようと努力」するという提案に従った結果です。なので、僕のACの問題は「自分にアルコホリズムと同じ強迫観念と渇望現象、そしてその否認は自分の中にないか、あるとしたらそれはなにか」という問いをステップ10の日々の棚卸しとステップ11の祈りと黙想の中で100日間見張り、導きを求めつづけた結果として取り組み始めたものです。

アルコホリズムからの回復は僕にとってかつてないほど素晴らしいものでした。なので自然と「自分に他の問題があるならそれにも応用したい」という気持ちを持つことができました。また、否認していた自分の苦しさにも気づくことができました。物質アディクションを持つACの方は、この順番を意識してもらいたいというのが僕の提案です。

 

物質嗜癖など肉体の死や社会的破滅に直結する嗜癖がなく、なおかつACである場合

ACの問題単体の方は、迷うことなく12ステップを徹底して実行することをおすすめいたします。僕はAC単体の問題ではなく、あくまで肉体的な死や社会的破滅に直結する嗜癖であるアルコホリズムが入り口でしたので、感覚的にはストンと理解できないのですが、やはり自分の1番の問題が重要なのは明らかだと思います。

ここで重要なのは、「ACは死に至る病ではないのだからのんびり取り組むべき」ということは絶対にないということです。ACは確かに肉体的・社会的な死や破滅にはすぐには直結しないかもしれませんが、自分の人生を生きられず人生を棒に振り続けて死ぬことや、周囲を死に至らしめる可能性は十分にあると僕は思います。現在(20年8月)の僕にとってはACの問題も決して、理由なくあとまわしにできる問題ではありません。

 

12ステップは回復に必要な「生き方の原理」なのでシンプル。なので様々なことに応用できる

12ステップは「生き方」という大テーマを12個のステップに要約した非常にシンプルなものです。このシンプルさゆえに、アルコホリズムだけではなく他の様々な問題にも応用可能なのだと理解しています。なので、各嗜癖ごとに独特な12ステップがあるわけではないと思います。各嗜癖はそれぞれ現れ方や影響は違いますが、回復の原理は同じであるというのが今の僕の理解です。

シンプルさを保ちながら、霊的完成ではなく霊的成長への道を共に歩んでいきたいと願います!