しましまな日々

12ステップを通じた問題からの回復について

神戸ダルクヴィレッジ『あなたの声を届ける』

「話せば回復する」というスタンスはAAの基本スタンスではないと私は思います。AAの基本スタンスは「霊的体験・霊的目覚めを得て霊的に変化すれば回復する」というものであり、そのための12ステップが回復の原理です。ミーティングはその原理を伝えるための手段だと今の私は考えています。

ミーティングやOSMで自らの過去をあるいは赤裸々に、あるいは誇張し、あるいは感情的に、あるいは笑いのネタに「話す」というのは、個人的経験からすると別に楽になるものでもありませんでした。後で揺り返しが来てかなりしんどいこともありましたし、辛いこともありました。

また、社会運動界隈でなんらかの被害の当事者に対して「あなたの経験を話して外化する必要がある、社会に怒りを伝えなくては」と語る(自称・他称問わず)支援者の言説は昔からありましたし、そういう催しもけっこうあるのですが、僕の知る少ない例では話す側は辛そうなことがとても多かったと記憶しています。

こういった自己開示のリスクは12ステップグループ内部ででも外部ででも変わらず存在する、と私は感じています。ミーティング内だから安全、なんてことはないと思うのです。スピーカーをやって次の日スリップ、という話はよくあることでしょう。

 

神戸ダルクヴィレッジが編集した『あなたの声を届ける』は講演などでスピーカーとして話すリスクやメリットの事例、注意点や対策方法などの経験の蓄積があり、そのような活動をする際の参考になると思いました。リスクを考えずに「とりあえず話したほうがいいよ」などと、他者に安易に自己開示を求める無責任な声をかけないためにも、一読の価値があります。

私個人としては社会変革的な講演や活動への欲求がほぼありません。個人の回復としては「忘れないでください。私たちは、ミーティングに出ることで回復するのではありません。ステップに取り組むことで回復するのです」というチャーリー・Pの言葉を大切にしたいと思っています。

この紹介記事が、読んでくださる方の役に立てば幸いです。

 

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「仲間の中ではなく、一般の人の前で自分の体験談を話すとき、知らず知らずの間に再トラウマ化・再発・傷つき体験をすることが多くあります。(中略)「とにかく体験談を話すことは良いこと」という風に考えている支援者やイベント主催者の方も多い中、本人も高揚する感覚に紛れて、自身が傷ついていることに気がつかないことがほとんどです。
 支援者の間で、「依存症者=体験談」という構図がどこかで出来上がってしまっていませんか? 確かに依存症当事者の体験談は、心に響くものがあり、多くの人に聞いていただいてもらいたいものですが、大きなリスクがあることを、ちょっと立ち止まって考えるためのガイドブックとして理解を深めるにも必須のガイドブックです。」 (HP紹介文より)

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